夫婦げんかが子どもに与える影響、子どもの脳を傷つける親たち
久しぶりの書評です。そして珍しく新書です。
しばらくバタバタしていたのですが、やっと余裕ができて読了しました。
『子どもの脳を傷つける親たち』著者は小児精神科医の友田明美氏です。
かなりショッキングなタイトルが気になって読み始めた本です。この本を読んで初めて「マルトリートメント(不適切な養育)」という表現を知りました。
マルトリートメント(不適切な養育)とは、
これは虐待とほぼ同義ですが、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育をすべて含んだ呼称です。ー書籍より引用
子どもの前での夫婦げんかなども含まれるとのことです。
日本では虐待という表現の方がよく使われますが、虐待といってしまうと、多くの人は自分の家族には当てはまらないと思ってしまいがちだといいます。
また、著者は「マルトリートメントの経験がまったくない親などいないでしょう」とも述べています。
著者は小児精神科医として子どもと接するほか、大学教授として研究にも携わっています。
この本ではマルトリートメントとはどういった行為が当てはまるのか、といった内容のほか、マルトリートメントによって、子どもの脳が変形してしまうというショッキングな事実が、専門的な内容も交えながら書かれています。
途中には実際の事例も紹介されており、胸が締め付けられるようなお話もありますが、後半は子どもの柔軟性や回復力、マルトリートメント予防のために社会ができることといった内容が書かれており、ショッキングなだけでなく、少し希望も持てるような構成になっていると感じました。
個人的に印象に残ったのは、マルトリートメントによる脳の変形には、特に影響を受けやすい年齢(感受性期)があるということや、受けるマルトリートメントの種類によって、影響を受ける脳の部位が異なるという内容です。
このような内容について、ときに著者の考察も交えながら解説されています。
身体的、精神的マルトリートメントによって脳が変形してしまうというのは、説明されると納得する内容ではありますが、これまで私はいわゆる「こころ」への影響ばかりを考えていたので、「こころ」も含む脳への器質的な変化について知り、親としての責任の重さを再認識しました。
読んでいて今までのあれは不適切な養育ではなかったかな?とギクリとすることもありました。子どもが小さいうちにこの本に出会って、子育てを見直すことができて良かったと思います。
これからも折に触れて読み直し、自分の子育てを見直すきっかけにしたい本です。
また、私は娘が1歳になってからこの本に出会いましたが、できればもっと早い時期から読んで、不適切な養育をしないように役立てたい本だと思いました。